かげろへる線路を都電酔ふやうに 大倉悌志郎
かげろへる線路を都電酔ふやうに 大倉悌志郎
『合評会から』(日経俳句会)
反平 都電の走り方は、本当に酔っているように見えます。線路は普通の道より熱しやすいから陽炎がよく立つ。余計、ゆらゆらと見えるのですね。
三薬 そうですね。陽炎の中を走ると、都電のゆらゆら感が増します。
二堂 「酔うように」がいいですね。ただ都電が線路を走るのは当たり前、この点がどうかな。
青水 このような都電の動き、テレビの旅番組でよく見ます。それを「酔うように」と。感心しました。
阿猿 敢えて切字を使わずに詠んだことで、ゆらゆら感が増幅されています。
冷峰 都会の街並みを酔うように行く都電。いつか見たような光景が再現されている。
広上 陽炎の立ち上る中を都電がゆっくり走って行く様子が目に浮かびます。
十三妹 都電そのものが今やバーチャルランドのような感じ。まさに「酔うように」ですね。
悌志郎(作者) 都電・荒川線に乗り、あちこちへと。いま陽炎の中を走っているのだな、と・・・。
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作者の話を聞くと都内探訪のプロかと思うほど。その見聞+機知から名句、佳句が生れてくる。(恂)