だしぬけに友の訃報や寒戻り     高石 昌魚

だしぬけに友の訃報や寒戻り     髙石 昌魚 『この一句』  日経俳句会三月例会への投句だから、恐らく句友高瀬大虫さんを悼む作品であろう。句会の十日ほど前に訃報が飛び込んで来た。逝去の一報というものは常に突然舞い込むものだから、当然と言えばそうなのだが、大虫さんの場合はまさに「だしぬけに」飛び込んで来た。誰もが「まさか」と絶句した。  この追悼句の作者は既に米寿を迎えられているのだが、相変わらず矍鑠として、若々しい句を詠まれる。平成18年夏に大虫さんが入会された時以来、八、九歳若い後輩を温かく迎え、親しく詠み合っていた。句会では二人とも大概近くに座を占めて、お互い物静かなお人柄だから、落ち着いた俳句談義をされていた様子がうかがえた。  心臓ペースメーカーを取り替えるか何かの手術で、ご本人は「ちょっと行って来ます。三月例会には出ますよ」と言い、周囲も「行ってらっしゃい」と気軽に送り出したのであった。それなのに・・という感じである。  「突然に」などと言わず、少々下世話でぞんざいな響きの「だしぬけに」という言葉が、まさにぴったりな感じである。(水)

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