柳絮飛び子馬の夢に寄り添ふや 工藤 静舟
柳絮飛び子馬の夢に寄り添ふや 工藤 静舟
『季のことば』
「柳絮」とは柳の種子のことで綿毛がついており、風に乗って四方に飛び舞う。柳は早春から仲春にかけて地味な花を咲かせ、それが実る晩春、盛んに柳絮を飛ばす。馬も三月から四月が出産期で、ひょろひょろと脚ばかり目立つ仔馬が母馬に甘えながら芽生えたばかりの野原ではしゃぐ。
だからこれは「柳絮」と「子馬」で、まさに季重ねの見本のような句なのだが、それが少しも違和感を感じさせない。
「銀座の柳」で有名なシダレヤナギは柳絮をあまり飛ばさない。盛んに飛ばすのは川べりや湖沼の回りに自生しているネコヤナギ、カワヤナギ、タチヤナギ、コリヤナギなどである。柳の本場である北欧や中国には真っ直ぐにそそり立ち大木になる柳も多い。日本でも北海道、東北地方では晩春になるとそうした柳が一斉に柳絮を飛ばし、まるで雪降りのようになる。子馬が果たして昼寝をするのかどうか分からないが、柳絮の舞う生暖かい昼日中には、確かにこうした幻想的な雰囲気が漂う。子供に還ったような気分になる句である。(水)