耳飾り弾む横顔風光る 水口 弥生
耳飾り弾む横顔風光る 水口 弥生
『季のことば』
三月も半ばを過ぎると春の日差しはかなり強くなり、吹く風も暖かく、まばゆく光っているように感じられる。そうした日の光と風そのものを言うのと同時に、ああ春だなあという喜びを表すのが「風光る」という季語である。カレンダーで言えば仲春から晩春、三、四月となる。
この句は女性の横顔に照準を合わせて、「風光る」雰囲気を生き生きとうたっている。若い女性を詠んだものと見做しても悪くはないのだが、それだとあまりにも真っ当過ぎる。私の勝手な思い込みかも知れないのだが、むしろ落ち着いた齢のご婦人とみた方がいいような気がする。
アクセサリーなどに一々構わなくなった中年女性が春風に誘われて、このところ着けなくなったぶらぶら垂れ下がるのをして外出したのだ。こんなちょっとした変化で気分が変わり、歩幅も変わる。「耳飾り・弾む・横顔・風光る」と跳ね返るような詠み方と相俟って、そんな感じが明るく伝わって来る。「イヤリング」と言わずにわざわざ「耳飾り」としたのが、印象新鮮である。(水)