み仏の千の手妖し春燈下 徳永 木葉
み仏の千の手妖し春燈下 徳永 木葉
『合評会から』(日経俳句会)
臣弘 「おいでおいで」と見る人を誘っているような、春灯の下の妖しげな感じ。
哲 弱い光で千手観音の手が揺らめいているのを「妖し」と言って春の情景を伝えている。
十三妹 千手観音、不気味じゃないですか。そうかと言って慈悲深い。春燈下に妖しさと気高さが一体となっているのが素敵。
大虫 手が何本もあるとそれだけでも妖しいが、持っている物も妖しげ。「春燈下」は「春灯し」がいいかなとも思ったが、春の妖しさを表現していい。
而云 春灯が効いていて、いかにも妖しい。「み仏の千手妖しき春燈下」とやった方がいいかなとも思ったが。
万歩 「春燈」の季語の力で、仏像の持つ官能的な側面が上手に表現されている。
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灯明にぼんやり浮かぶ千の手を見ていると、動き出すような気がして来る。作者によると駅に張ってあった仁和寺展のポスターを見て詠んだということだが、すごい腕前だ。幻想世界に引き込まれる感じで、とてもうまい。(水)