新弟子の全身春の光あり      野田 冷峰

新弟子の全身春の光あり      野田 冷峰 『おかめはちもく』  始めて裸の力士を見た時、人は何に最も驚くのか。肌の色つやだろう、と私は思う。男でもそう話す人が多いのだが、特に女性の場合、お相撲さんの肌はこんなに美しいものか、と目を丸くするらしい。近年の相撲人気は若い女性ファンの増加によっているのも、むべなるかな、である。  ジョージア出身の栃ノ心が渾身の力で相手を引き付けると、真っ白な肌が一気にピンク色に染まっていく。これも見ものだが、それに勝るとも劣らないのが、稽古を終えたばかりの若手力士の肌の色だ。大きな息をつきながら表に出てきた時は、まさに流汗淋漓。朝日を浴びた肌を想像して頂きたい。  作者はそんな場面を見たのだろう。「全身春の光りあり」は見事な詠み方だと思うが、客観的描写である点が惜しい。新弟子の全身を見た瞬間の驚き、感激を句に少々加味して頂きたい、と思うのだ。難しいことではない。最後の「あり」の代わりに常用の切字を置いてみたらどうだろう。  添削例  新弟子の全身春の光かな      (恂)

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