椀の底病棟食の若布かな      大熊 万歩

椀の底病棟食の若布かな      大熊 万歩 『この一句』  最近、一週間ほど入院生活を送っただけに「椀の底の若布」に感じるところが多い。「食事は全部食べましたか」「薬はきちんと飲んでいますね」。看護師は患者一人一人にここまで気を配るのか、としみじみ思わされた。もちろんルーティンワークなのだが、食べ物はうかつに残せない。  点滴が外され、一人で歩けるようになると、配膳車から自分で食器のプレートを取り、病室まで運んで食べることになる。食器を返す時、看護師とすれ違うと、「食べ残し、見つかったか」と肩をすくめてしまう。椀の底の若布の切れ端を気にする作者の気持ち、「まことに同感」である。  合評会で「床頭台(ベット脇の台、テーブル)までの多くの人の労苦を思う」(好夫)というコメントがあった。今は神楽坂でクリニックを開業されているが、かつて病院の院長を務めた人の言。粛然たる気持ちになった。以来、「病院のメシ? 美味いはずが・・・」なんて言葉は謹んでいる。(恂)

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