公園のいつもの場所にクロッカス  田中 白山

公園のいつもの場所にクロッカス  田中 白山 『季のことば』  敗戦からしばらくたった頃、東京の住宅地では小さな庭に草花の球根を植えるようになった。一度、植えれば何年も咲いてくれる、という経済性によるものだろう。我が家の近辺では、和洋の水仙が多かったが、“洋館”が一部屋あるような、少し裕福な家ではクロッカスを咲かせていた。  ブロック塀が全盛を極める前の頃である。子供らは垣根を透かして人の家の庭を覗き、クロッカスがあれば「金持ちだ」などと噂し合ったものだ。毎年、見ていると庭の変化も分かった。ある家ではクロッカスが勢力圏を広げ、例えば枯芝の中に黄色や白の花を点々と咲かせていた。  掲句を見て「そう、そう。いつもの場所だ」と同感した。その一方で、植えたままにしておくと、別の場所に移動して行くのではないか、とも思った。近年は公園や幼稚園でクロッカス見たことがあるが、一般家庭ではどうだろう。ブロック塀の内側は、覗こうにも覗くことが出来ない。(恂)

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