雪をかく「よく降りましたね」と笑み交し     須藤 光迷

雪をかく「よく降りましたね」と笑み交し     須藤 光迷 『おかめはちもく』  1月22日と2月1日、東京近辺に雪が降った。特に1月22日は都心でも10数センチ積もり、雪に弱い首都圏のJRは大混乱を来した。北国の人たちからは憫笑を買うような雪だが、ひ弱な都会人には「よく降ったもんだなあ」となる。この句は翌朝の東京の時ならぬ雪掻き情景を軽妙に詠んで、中々いい。  ただ、カギカッコがどうしても気になる。現代俳句は「読む」鑑賞の仕方が盛んになったせいか、近ごろカギカッコ俳句がよく出て来るようになった。しかし、元々俳句というものは句会に出て、「読み上げ、聞く」文芸である。「雪をかく、カギカッコ、よく降りましたね、カギカッコ閉じ、と笑み交わし」では、シラケてしまうだろう。カギカッコなどを使わずに、話し言葉であることを分からせる工夫が大切だ。話し言葉をそのまま句に仕立てた傑作に、正岡子規の『毎年よ彼岸の入に寒いのは』がある。彼岸だというのにずいぶん寒いと子規がこぼしたら、母親がこう言ったのを聞いて、そのまま句にしたのだという。  掲出句も、「雪掻きや降りましたねえと笑み交す」で良いのではないか。「を」などという余計な助詞が省かれて、口調もずっと良くなる。(水)

続きを読む