熱燗にゆるゆる溶ける癇の虫     齊山 満智

熱燗にゆるゆる溶ける癇の虫     齊山 満智 『季のことば』  「熱燗」は真冬の呑兵衛には抗し難い吸引力を持つ言葉である。熱燗と聞けば少々の義理を欠くくらい何でもないといった気分になる。この句はそういう熱燗の本意を実にうまく詠んでいる。熱燗が喉元を通り過ぎて、はらわたに落ちて行く、納まるところにおさまると、ふうっと一息つくのだ。  この句はよほどの呑兵衛の句に違いないと踏んでいたら、なんと女の人の句だと分かってびっくりした。いつだったか、歳時記で見たのか俳誌で読んだのか記憶が定かでは無いが「熱燗やわが腹わたのありどころ」という句を見て、ああ熱燗を実にうまく詠んだものよと思ったら、これも女性の句と知って驚いたことがある。近ごろは本当に酒を味わって飲む女性が増えてきたのだなあと思う。  ただ、「癇の虫」の第一義は乳幼児の原因不明の引き付けのことなので、「癪の種」の方がいいかななどと思っていた。しかし、それが大人にも使われるようになり、腹が立つことを言うようになったことを考えれば、「癇の虫は・・」などと小理屈を並べることは無かったのだ。番町喜楽会で圧倒的に支持されたのもむべなるかなの句である。(水)

続きを読む