茹でたまごつるりとむけば冬の月    藤野十三妹

茹でたまごつるりとむけば冬の月    藤野十三妹 『おかめはちもく』  句を見て「いいな」と思った。茹で卵を剥いた時の「つるり」の感覚を月の出に絡めたと言えよう。一茶に雰囲気の似た句があったはずだ。文庫本「小林一茶」(大谷弘至著)で調べたら「雪とけてクリクリしたる月夜哉」だった。著者は「オノマトペを駆使し」「なにより音感がいい」などと書いている。  掲句も同様、と言えるだろう。一茶句は雪解け後の月を詠んでいるが、こちらは冬の月の出である。一茶句に並ぶ作品、と言いたいところだが、気になる点があった。オノマトペの「つるり」は八割方、茹で卵に掛かっていると思う。ここは是非とも「冬の月」に主役の座を与えたいところだ。  そこで「中七」の前後をひっくり返し、「むけばつるりと」としてみた。こうすれば「つるり」は七、八割ほど「冬の月」に掛かってくるのではないだろうか。すなわち添削例は「茹でたまごむけばつるりと冬の月」となる。茹で卵を剥いていたら、冬特有の白い月が「つるり」と上ってきたのである。(恂)

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