寺町の瓦くろぐろ加賀時雨     中村 哲

寺町の瓦くろぐろ加賀時雨     中村 哲 『合評会から』(金沢吟行句会) 綾子 あの黒瓦を詠みたかったのですが、できなかった。これはいい句ですね。 二堂 冷たい雨に降られましたが、瓦の色を見るのを忘れていました。黒々とした瓦もきれいでしょうね。 水兎 がっしりとして頑丈そうな瓦は、雪国ならではの物だと、まいどさんの説明がありましたね。道端に積まれていた瓦が、曇り空の下で艶々と黒光りしていたのが印象的でした。俳句の題材への、目の行き届いた作品だと思いました。           *       *       *  時雨に濡れて黒くつやつやと光っていた瓦は、能登特産の瓦だという。関東地方はじめ太平洋沿岸では灰の釉薬による銀鼠色の瓦が用いられているが、北陸から東北の日本海側の豪雪地帯では、これでは浸み込んだ水分が凍って膨張し割れてしまう。そこで防水性と耐寒性を高めるため、黒い釉薬を掛けてしっかり焼いたものが能登瓦。伊達や酔狂の黒瓦というわけではないのだ。  この句は「加賀時雨」という造語と相俟って、あの吟行初日の夕刻、突如来たった冬の金沢の土砂降りを脳裡に刻みつける作品になった。(水)

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