横綱も宮司も人よ帰り花     杉山 三薬

横綱も宮司も人よ帰り花     杉山 三薬 『この一句』  大相撲の横綱日馬富士が後輩の貴ノ岩の態度に怒って暴行を加えた事件と、江戸三大祭の一つ深川富岡八幡宮の宮司姉弟の殺人事件を詠んだ時事俳句。見る人にいろいろ物思わせる「帰り花」という季語に、こうしたショッキングな事件を取り合わせたところがとても面白いし、効果的である。「上手く詠んだなあ」と感心した。特に「人よ」と言ったところが出色だ。尊敬される地位にある横綱や宮司だって、やはり弱い人間なのだというのである。  しかし、この句は数年すると、印象がぼやけて来そうな弱味を持っている。わずか一月経つかたたない現時点でさえ、日馬富士の殴打事件はまだしも、「宮司」の神社が富岡八幡とすっと言える人が百人中何人いるか、ましてや宮司の名前など誰も覚えていまい。五年後十年後は推して知るべしである。「時事俳句」にはそういう弱味がある。しかし、世間の動きを注視して「その時、その出来事」を詠む癖をつけると、やがてそうした句の中から百年経っても生き生きと輝く作品が出て来るはずだ。その句によってその出来事と時代が読者の脳裡に甦る。お互いがんばって、そんな時事俳句を詠みたいものだ。(水)

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