白障子口火をきれず父と娘と     向井 ゆり

白障子口火をきれず父と娘と     向井 ゆり 『おかめはちもく』  何か重大な相談事を抱えた父と娘。昔なら火鉢の灰を掻き均してはまた掻き混ぜたりといったところだろう。火鉢など姿を消してしまった今、こういう時は父親も娘もどうすればいいのだろう。きっと白い障子を見つめて意味も無く桟の数を数えたりしているのだ。  あれこれ想像をかき立てられる句である。それは誰にも人生一度や二度はこうした事があるからだ。  実にいい句なのだが、この句は白障子で切れ、「ず」で切れて、いわゆる「三段切れ」になってしまっている。それが奇妙な時間的空白を生じて、この句の雰囲気を盛り上げているようにも思えるものの、やはり「ず」という音がきつすぎるのではなかろうか。  「ず」でなく「ぬ」としたらどうだろう。「ぬ」は打消しの助動詞「ず」の連体形で、下の「父と娘」に素直につながる。これで二句一章の句姿も整う。  (添削例) 白障子口火を切れぬ父と娘と       (水)

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