今朝の日を諸手で開く白障子     廣上 正市

今朝の日を諸手で開く白障子     廣上 正市 『季のことば』  気分爽快な句である。障子を透かして射し込んで来る朝日に初冬の晴天を感じ取った。両手で障子をさっと引き開ける。思った通り、雲一つ無い真っ青な冬空だ。  何と言っても「今朝の日」という珍しい表現が面白い。「朝の太陽」であると同時に「今日一日」をも指している。それを「諸手で開く」とつなげた。この勢い良いリズムがこの句の命だ。  ところで、「障子がどうして冬の季語なんですか」とよく聞かれる。「障子はね、防寒用の建具だったからですよ」と言うと、不思議そうな顔をする。大昔の日本家屋は基本的に開けっ放しで、冬になると板戸や襖で寒気を防いだ。しかしこれでは室内が真っ暗。そこで平安末期から鎌倉時代、桟に絹布や紙を貼った障子が生まれた。紙の生産が盛んになった江戸時代、障子は庶民の家庭にも普及した。それが連綿と昭和四十年代まで続いたのだが、今や障子は防寒というよりはカーテン代わりとか、装飾建具に堕落している。しかしこの句の障子はれっきとした実用品のようだ。伝統的な住まいの様子もしのばれる。(水)

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