白雲を拭ひ続ける枯れ薄     高瀬 大虫

白雲を拭ひ続ける枯れ薄     高瀬 大虫 『この一句』  うかうかしていると何を言っている句なのか合点が行かぬうちに、何となく通り過ぎてしまう。そんな感じの句である。実際、よく読んでも別に大したことを言っているわけではないのだ。野原の一叢の薄。穂をしきりになびかせ、真っ青な空に浮かぶ白雲に「お出で、おいで」をしているという。ただそれだけのことである。「それがどうしたのさ」と言われるような句と言ってもいい。  しかし私は何故かこの句に引き付けられた。薄の穂は有るか無きかの風にも金茶色に輝きながら左右に揺れる。野原の真っただ中で、まるで無限に働き続ける永久機関のように、青空に浮かぶ白雲を撫でている。全く無意味な動きにも思えるし、何か深遠な思想を呼び覚ますきっかけになるかのような・・とにかく妙な感じの句だと思ったのである。  一方で、そんな七面倒臭いことを考えずに、字面通りにその景色を思い浮かべればいいのだとも思い返す。実に美しい冬晴れの荒野が浮かんで来る。それに、この句は「ワイパーのように」などと、陳腐な譬えを引かなかったところがいいのだなとも思う。(水)

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