時雨聞き老後のゆとり妻に問ひ    深瀬 久敬

時雨聞き老後のゆとり妻に問ひ    深瀬 久敬 『おかめはちもく』  老後の生活のゆとりを妻に尋ねているこの句に、いくつかの感想が出た。「普通は、俺についてこい、じゃないの」「もう年金族なんだ、我慢してくれ。俺ならそういうね」「無駄遣いはやめて、堅実にやってくれ、と私は言いたい」――。その一方で「優しい旦那さんだと思った」と語る人もいた。  それぞれのコメントは興味深いが、当欄の役目は句の出来を探り、正すことだ。問題点は「時雨聞き」だと思う。「時雨を聞きながら」という意味になるから、上五とそれ以下につながりが出来て、少々、理屈っぽくなるのが不満。一句の中に「聞き」と「問ひ」と、二つの動詞を用いるのも推奨できない。 そこで「時雨るるや」とか「宵時雨」などとして、上五と中七の間に「切れ」を入れてみたい。一例として、切れ字の代表格「や」を使ってみよう。初冬の夜である。家の中で、老後のことを率直に話し合う、好ましい夫婦の様子が見えてくるだろう。外は時雨、家の中は暖かそうである。 添削例「時雨るるや老後のゆとり妻に問ひ」    (恂)

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