それぞれに故郷のあり鳥渡る    中村 哲

それぞれに故郷のあり鳥渡る    中村 哲 『合評会から』(番町喜楽会) 双歩 「それぞれに故郷」が渡り鳥のことだとすると、つき過ぎの感がある。取り合せの句とみなしたい。 可升 「渡り鳥には故郷がない」と書いた本があった。それで、これは人間の故郷、と納得した。 命水 私もそのようなことをどこかで読みました。 冷峰 「それぞれ」が気に入った。故郷を離れてもそれぞれに我が家がある。 斗詩子 私もこんな句を作りたかった。  哲(作者) 人間の望郷の句、と考えています。              *          * この句、俳句の初心者や未経験者なら「渡り鳥にはそれぞれの故郷がある」と解釈するに違いない。しかし俳句に馴染むにつれて、「故郷のあり」で句は切れて、それぞれに故郷があるのは人間のこと、と受け取るようになるだろう。この作り方(約束ごと)が「取り合せ」であり、わずか十七音の中に「二つの世界」が出来上がることになる。数ある“俳句文法”の中の、最も重要なものの一つだと私は思っている。(恂)

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