荷を降ろし下る坂道秋楽し 斉山 満智
荷を降ろし下る坂道秋楽し 斉山 満智
『合評会から』(番町喜楽会)
冷峰 僕は高校時代ボッカのアルバイトをやりました。山小屋に重い荷を下ろすと帰りはルンルン気分です。僕の青春時代を詠んでくれた句だと思いました。
水馬 私は神社かお寺の帰り道を想像しました。精神的な「荷を降ろし」たのではないかと思いました。いろんな事を想像させるいい句です。
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句会では、「一体どんな荷を運び上げたのか」「いきさつがよく分からない。運送屋か」「荷を降ろすとは、何か厄介払いのような意味に取れる」などと、あれこれの解釈が飛び出した。
私は素直に、大荷物を目的地に運び上げ満足感に浸っていると受け取り、楽しい気分を歌い上げたのがいいなと思った。作者の自解によれば、「『お役目』という意味で『荷』を使いました」ということである。
となると、「下る坂道」と急に具体的になってしまう写生的叙述がどうなのかという疑問も生じるが、ま、いいだろう。精神的な重荷も下ろせば、後は気楽な下り坂だ。冷峰、水馬ご両人の句解がいずれも当てはまる面白い詠み方だ。(水)