砂浜のふやけしサンダル秋の声 石黒 賢一
砂浜のふやけしサンダル秋の声 石黒 賢一
『おかめはちもく』
海水浴客で賑わったのは、もう一か月以上も前のこと。海の家は取り払われ、人影もまばらだ。そんな砂浜にサンダルが落ちていた。ビーチサンダルか、町で見かけるようなサンダルか。いずれにせよ海水か雨水によって膨らんでいる。いかにも「秋の声」が聞こえてきそうな情景である。
問題は「ふやけしサンダル」だと思う。中八については人によって考えが違うらしいから、この際は気にしないことにして、サンダルの状況を問題にしたい。サンダルは砂浜に長らく置き去りにされていたのだ。ふやけている、というより、乾いて色褪せだ、とした方が適切ではないか。
ただし「色褪せしサンダル」では“中九”となり、これはまずい。「褪せた」だけでも「色が褪せた」の意味があるのだが、「色が」がないと、どうもしっくりこない。そこで砂浜に長く置かれたまま、と思わせる状況にしてみた。添削例「砂浜にサンダル片方秋の声」。これでどうだろう。(恂)