秋風や山城址に井戸の址    広上 正市

秋風や山城址に井戸の址    広上 正市 『この一句』  山城に行くと、なぜこんな急峻な場所に、という疑問が起きてくる。登るのがたいへん、水も食料も求めにくい。そのため殿様や武士たちは平時、城下の平地に住み、普通の生活を送っていたらしい。しかし強敵の来襲によって劣勢に陥った時は城に登り、籠城して耐えることになる。 もちろん山城も一様ではない。戦国時代は絶えず戦が続いていたため、山城にも長期戦への備えが必要になる。食料や武器をしっかり備えるのは当然だが、水脈の豊かな山を築城の第一条件とし、深い井戸を掘って水を確保することになる。「山城址に井戸の址」。むべなるかな、と思う。 ある城巡り好きの話では、井戸址を見つけるかどうかが、山城見学の一つのポイントになるという。見つければ「この井戸で何日くらい耐えたのか」などと腕を組む。その辺がこの趣味の醍醐味で、いまファンが増えているとのこと。山城址に立つ人たちは、秋風がよく似合いそうだ。(恂)

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