人伝の友の訃報や秋の風     高石 昌魚

人伝の友の訃報や秋の風     高石 昌魚   『この一句』  この夏、かつての会社の同僚が亡くなった。遺族はさまざまな事情から出来るだけ小さな葬儀、つまり家族葬を望んだ。その結果、連絡の届かなかった友人・知人が大勢いて、葬儀の後、「私の恩人だったのに」「なぜ知らせてくれなかったのか」などという連絡が入ったという。  そんなこともあり、この句の訃報の人と作者はどんな関係にあったのか、と考えてしまった。勝手読みかもしれないが、句からさほどの深刻さは感じられない。人づてに友の死を知り、「いい奴だった」と往時を静かに回顧するくらいで、故人への思いはやがて薄らいで行ったように思われる。  そんな風に考えたのは「秋風」という季語のせいかも知れない。五行説による秋の別称に「白秋」があり、「色なき風」という秋風の別称も生まれた。秋風は即ち、涼やかな淡い風である。「君子の交わりは淡きこと水の如し」(荘子)。よき人との付き合いは淡く、別れもまた同様なのだろう。(恂)

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