もろこしを二列二列と食べにけり     石黒 賢一

もろこしを二列二列と食べにけり     石黒 賢一 『この一句』  モロコシ(蜀黍)とは植物分類学上の名称としてはコーリャン、マイロ、ソルガムなど、穂状の実をつける黍(きび)を言う和名なのだが、トウモロコシ(玉蜀黍)を「もろこし」と呼ぶ地方やその住民がいる。この句もそうである。  焼玉蜀黍は郷愁を誘う食べ物だ。醤油の焦げた香りが食欲をそそり、かぶりついて実を噛みしめると、ほんのりした甘味と香ばしさが口中に広がる。縁日の夜店では綿飴、お好み焼き、烏賊の丸焼きと肩を並べる定番商品だ。食べ物がすっかり洋風化した今日でも相変わらず焼玉蜀黍の屋台が出ているところを見れば、大人にも子供にも根強い人気を保ち続けていることが分かる。  この句の面白さはもちろん「二列二列と食べにけり」にある。トウモロコシの食べ方には人それぞれの癖がある。一列ずつちょこちょこと横に食べていく人、くるくる回しながら威勢良く齧る人とさまざまだが、この人は器用に二列ずつ綺麗に食べて行くようだ。  とにかくトウモロコシの齧り方を句にするとは奇想天外で、思わず笑ってしまった。こういう句は楽しい。(水)

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