砂浜に砂地の戻り秋の声     印南 進

砂浜に砂地の戻り秋の声     印南 進 「おかめはちもく」  「砂浜に砂地が戻り」。はてな、と考えているうちに次の句に目が移り、そのまま読み進んでしまった。句会では百句前後の句を見るのが普通だから、このようなことがよく起こる。じっくり考えれば分かったかも知れない。砂浜の上にあった何かが、なくなってしまったから、と気付くかどうかだった。  夏の間の海水浴場には海の家が並んでいたが、秋になって取り払われて、本来の砂浜に戻った。広々した砂浜、誰もいない海・・・。なるほど秋の声が聞こえてきそうである。しかし私の他にも、この省略に気づかなかった人がいたようだ。俳句は省略の文芸、というものの、少々、やり過ぎだったか。 それに「砂浜」と「砂地」の重ね方が成功したとは言い難い。海岸に延々と続いていた海の家が消えてしまった、という状況が秋の到来なのである。即ちここは「海の家砂地に戻り秋の声」でいいのだろう。省略はややもすれば「やりすぎ」となる。人の句を見るような、客観的点検が必要である。(恂)

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