黍畑鬼が迷子の隠れん坊     田村 豊生

黍畑鬼が迷子の隠れん坊     田村 豊生 『合評会から』(三四郎句会) 照芳 隠れん坊の鬼が迷子に。ほかの子を捕まえる役目なのに、鬼がどこかに行っちゃった。実はボクもこういう句を作りたかった。うまく詠んでいると思う。 久敬 黍は丈が高いから、子供だと完全に隠れてしまう。面白い句ですね。 而云 鬼一人が行方不明になって、どこかで泣いているのかも知れない。しかしこの黍畑、沖縄の砂糖黍畑なのかな。今の子は観光のヒマワリ園で隠れん坊をやっているらしいが。              *           *  「玉蜀黍(とうもろこし)」が兼題だった。句の「黍(きび)」だと別の季語になってしまう。まずいかな、と思ったが、すぐに気づいた。雑詠として「黍畑」を詠んだとすれば全く問題はない。作者は満州育ちである。少年時代に遊んだ大陸の広大な黍畑を思い出しながら、この句を詠んだのかも知れない。敗戦から引き揚げへの苦難は言葉に尽くせないものがあったはずだ。しかし七十年以上も母国で暮らすうちに、大陸の記憶の多くは、懐かしいものに変わっているのではないだろうか。(恂)

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