枝豆に青春の憶ひ湯気と立ち     田村 豊生

枝豆に青春の憶ひ湯気と立ち     田村 豊生 『季のことば』  枝豆は今では一年中ある。冷凍技術が進んだおかげで、四、五月に、採ったばかりのようなみずみずしいのが出て来たりする。それもごく普通の呑み屋でだから驚く。中国産の青く染めた冷凍モノなら真冬のチェーン酒場にもある。一方、品種改良によって枝豆用に作られた極早稲品種があり、ハウス栽培なのか、これまた五、六月に食べられる。もっともこういうのは「走り」と呼ばれて枝豆とも言えない値段になる。  とにかくそんなわけで枝豆に季節感が薄れ、俳句をひねる人間にはとてもやりにくくなったのだが、やはり枝豆は仲秋に食べる露地物が一番旨い。  この句の枝豆は、いつどこで食べているのだろう。句意からすれば、昔の仲間達と久しぶりに会って一杯やりながらの場面が浮かぶ。茹で立ての枝豆から湯気が立っているというから、多分、夕風に涼しさを感じる頃合いであろう。  話の合間につまんだ枝豆を口に持って行ってぷちゅっと押すと、二粒三粒飛び込んで来る。噛むと甘塩っぱい汁が出て、ちょっと青臭い枝豆特有の香りが口中に広がる。確かに青春の思い出話には枝豆がよく似合う。(水)

続きを読む