夕立よこのむしゃくしゃも流したい     大平 睦子

夕立よこのむしゃくしゃも流したい     大平 睦子 『おかめはちもく』  路上で突然夕立に遭ったら慌てふためき、情緒もなにもありはしないが、屋内に居て驟雨を眺めるのは悪くない。ただ、その人のその時の心理状態によって、夕立に対する気分は様々に変わる。体調良く精神高揚している時なら、耳を聾するような豪快な降り方に快哉を叫びたくなるだろう。逆に気が萎えている時だったら、打ちのめされる気分に落ち込むに違いない。  この作者は、何かに怒っており、むしゃくしゃしている。その怒りを夕立とともに洗い流してしまいたい、という気持はよく分かる。それをそのまま吐いた句であり、夕立の感じと合っていて、とてもいい。  ただ、せっかく「夕立よ」と強く呼びかけているのだから、最後までその調子を通した方がいいのではないか。また、「も」では弱い。他のものはどうでもいい、私の、この「むしゃくしゃ」を流しておくれというくらいに強く言った方がいい。「流したい」などと消極的に言い止めるのではなく、「よ」という願望の助詞で上五に合わせたらどうであろうか。  (添削例)  夕立よこのむしゃくしゃを流してよ       (水)

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