水打てば隣人もまたさそはれて    井上 啓一

水打てば隣人もまたさそはれて    井上 啓一 『季のことば』  夕方、門の外へ出て柄杓で水を打つ。初めは、もわっとした生暖かい空気が立ちのぼるが、やがて辺りに涼しさが漂ってくる。すると隣家の小母さんなどが出てきて、負けじと水を撒く。たちまち近所のあの家も、この家も。この句は昔の思い出を詠んだのだろう、と思ったが――。  待てよ、どこかでやっていたぞ、とネットで検索してみて思い出した。東京都などが音頭を取る「打ち水大作戦」というものが、二〇〇三年から始まっていたのだ。ヒートアイランド現象に対する打ち水の効果を調べるためだったが、この運動に参加する人々が毎年推計六百万人にもなるという。  その効果がバカにならない。東京二十三区の散水可能な場所に散水すれば、2度~2・5度の気温低下が可能だそうだ。これは凄い、江戸時代からの日本人の知恵だ、などと思っていたら、さらなる個人的なビックリが。今年の「打ち水大作戦」は何と当コラム掲載予定の二十日であった。(恂)

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