泰山木咲くや御苑の主となり    野田 冷峰

泰山木咲くや御苑の主となり    野田 冷峰 「おかめはちもく」  泰山木は新宿御苑を代表する樹木の一つと言えるだろう。桜ほどの豪華さはないし、紅葉ほども色彩もない。樹高最大で三十メートル、横に大きく広がる豪快な樹形ではあるが、秋、冬、春は単なる大きな常緑樹である。ところが夏を迎える頃から直径二十センチもの純白の花が開き出すのだ。  この時期、御苑のネット情報に「泰山木が咲き始めました」「泰山木が見頃です」と言ったお知らせが相次ぐようになる。この句は目立たなかった大木の変身ぶりを詠んでいる。今までは人々に見過ごされていたが、現在は御苑の主(ぬし)となり、園内を睥睨する貫禄を見せ始めた、というのだ。  ただこの句、「御苑の主となって花を咲かせた」とも解釈できるのが惜しいところ。「泰山木咲くや」という、切れ字を用いた言い回しに問題があるのではないだろうか。泰山木の花が咲いた、それによって御苑の代表的な樹木としての存在感を表すようになった、という流れで言い表したい。 (添削例) 泰山木咲いて御苑の主(あるじ)たり   (恂)

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