鏡見て冷や汗流す我も蝦蟇     流合 研士郎

鏡見て冷や汗流す我も蝦蟇     流合 研士郎 『この一句』  この句には驚いた。まさに私のことを言われたのではないかと思ったのである。腹が出っ張り、まことに不格好な身体になってしまった。前夜の酒が抜けきらず、洗面所の鏡を見て愕然とする毎朝なのだ。瞼は腫れ、アゴまでたるんでいる。なんのことはない、オレはまさに鏡を睨んで脂汗流す筑波山の蝦蟇(ガマ)じゃないか。というわけで、自己嫌悪も極まれりという傑作。  それで何はともあれ採ったのだが、「鏡に映った己が姿にトローリトローリと油汗が…。妙にリアリティがある句」(双歩)と、同じような感想を洩らす人もいた。  自らを一段貶めて笑いを取るのがユーモア精神だというが、これはまさにその骨法を得た句である。ただ、「この句の蝦蟇は喩えのガマガエルであり、季語としての役割を果たしていない」という非難があるかも知れない。でも、そんな難癖を吹き飛ばしてしまう面白さがある。(水)

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