栓抜きで栓たたく癖暑気払     廣田 可升

栓抜きで栓たたく癖暑気払     廣田 可升 『この一句』  「そうそう、こういうことよくやったなあ」「近ごろあまりやらなくなりましたね」。句会合評会はこの句を肴にひとしきり盛り上がった。  ビール瓶の王冠をはずす前に栓抜きでコツコツと叩く。こうすると泡がきれいに盛り上がるのだというのだが、ビール工場の見学に行った時、試飲会で専門家に聞いたら、「なんの根拠もありません」と笑っていた。  「暑気払」という言葉も近ごろあまり聞かなくなった。今は熱中症という言葉が使われるが、昔は「暑気中り(しょきあたり)」とか「日射病」と言った。暑さでぼーっとなり、ひどくなれば気を失ったり、発熱したりする。生水を飲み過ぎて下痢になる「水中り(みずあたり)」もあった。そういうことにならぬよう、ゲンノショウコを煎じて飲んだり、梅酒や焼酎を飲んだ。これが本来の暑気払なのだが、高度成長期以降のは単なる夏場の飲み会である。  一座の世話好きが皆のコップに手際良くビールを注ぐ。栓を叩いたせいか泡の出方が綺麗だ。「カンパーイ」。あとはいつもの賑やかさ。さんざん飲んで翌日は暑さに二日酔いが重なり、何のための暑気払だったのかというオチになる。(水)

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