渡る風青田に描く幾何模様     野田 冷峰

渡る風青田に描く幾何模様     野田 冷峰 『季のことば』  「青田」は早苗がしっかり根付いて勢い良く伸び始め、一面青々と生い茂った田圃を言う。七月の風景である。  青田に風が吹き渡ると、風の通り道の若い稲はそよぎ、白っぽい葉裏を見せる。帯のように細長く、時にはもっと幅広の長方形に、あるいは微妙な地形に従って三角形にと、いろいろな模様を田面に描き出す。風に連れてその幾何模様が動いてゆく様が、寄せ来る波のようにも見えるので、「青田波」という季語が生まれた。それをもたらす風が「青田風」というわけである。この句は、「青田風」と「青田波」を、そのプロセスを解き明かしつつ詠んでおり、とても面白い。  実際には七月の田圃は暑い。田圃の水まで熱くなり、これも「田水沸く」という季語になっている。日が照りつける田圃に入って、這いつくばるようにして雑草を抜く。この田草取りが米作りの中で最も苦痛を伴う重労働だ。今では除草剤を撒くからかなり楽になったようだが、それでも何やかや稲作は苦労が多い。  辛い草取りが一段落しての昼休みか、ちょっと小高い山裾の木蔭に一休み。涼しい風がさっと吹き過ぎ、青田はまた美しくそよぐ。(水)

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