薄暑から雲を隔てて延暦寺 高橋ヲブラダ
薄暑から雲を隔てて延暦寺 高橋ヲブラダ
『おかめはちもく』
選句表の中にこの句を見つけた時、「なかなかの句だ」と感心したのだが、句会では意外に点が入らなかった。「薄暑から」が分かりにくかったようだ。作者は「薄暑の街から」雲を隔てて比叡山の延暦寺を眺めたに違いない。山腹に雲が掛かっていたのだろう。いかにも薄暑を思わせる風景である。
ところが以上の解釈に確信が持てなかった。京都には何度も行っているのだが、市内から比叡山を見た記憶がない。京都へ仕事で行けば、そちらの方に神経が集中している。観光の時は市内のお寺や神社などを見て回るので、比叡山を眺めたことがなかったのだ。果たして京都市内から見えるのだろうか。
ネットで調べたところ「比叡山は京都市内のどこからでも見ることが出来る」と書いてあった。これで状況に間違いはない。句意は「薄暑の京都市内から雲を隔てて」となる。それなら常用の省略法を用いて、上五を「京薄暑」とするだけでいい。比叡山と眺める人の位置関係がはっきりしてくるだろう。
添削例 京薄暑雲を隔てて延暦寺 (恂)