春眠の目覚めやいのち恙なし     河村 有弘

春眠の目覚めやいのち恙なし    河村 有弘 『この一句』  七十歳を過ぎると否応なしに衰えが目立って来る。個人差があるが、動脈硬化、高血圧、神経痛、癌や前立腺肥大、腎臓病といった病気が出て来る。ただ、医学・薬学の進歩は目覚ましく、10年前だったら無理だっただろうなという難病を克服してしまうことも珍しく無くなった。  そうは言ってもやはり、70年以上も酷使してきた身体だから、あちこちが老朽化し、ガタが来ている。それを進んだ医療と医薬品の助けを借りてなんとか永持させようとしているわけだ。100年もたったヴィンテージカーを、部品を補修しながら記念パレードなんかに走らせているのを見る事がある。いつストンと止まってしまうか分からない。  この句の作者ももう立派な後期高齢者。大病も切り抜けてきている。若い頃はそれこそハーレーダヴィッドソンかマスタングかというような勢いで突っ走り、トヨタパブリカ級の私なぞ呆気にとられるばかりであった。  それが、朝、眠りから覚めて、「ああ今日も生きていたか」と思うと言うのである。己の齢を十分知り、生かされている有り難さを噛みしめている。(水)

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