降りそそぐ光の中を卒業す     斎山 満智

降りそそぐ光の中を卒業す     斎山 満智  『この一句』  いい句だ、いかにも卒業式らしい、と思ったが、私はこのような情景を実は見た記憶がなかった。小、中、高、大の卒業式会場はみな体育館や講堂であった。窓から入り込む光はさほど多くなかったと思う。これは母親など保護者の、卒業する子供たちへの思いによって描かれた光景なのかも知れない。  卒業生はみな卒業式を終えて新たな世界への一歩を踏み出して行く。それを見守る先生や親たちの心には嬉しさだけでなく、期待、不安などが入り混じっているはずだ。天の神様、どうか子供たちをお守り下さい、と祈っているかも知れない。「降りそそぐ光」にはそんな気持ちが込められているのだろう。  中学の時、「軍隊上がり」の実に怖い先生がいた。今ならクビ間違いなしの暴力も振るった。その先生が卒業式の後、生徒を送りに校門の外に来て、人目も憚らず号泣していた。生意気な生徒が「何だ○○(あだ名)、格好悪いなぁ」と笑っていた。いま思えば、あの日は晴れ渡っていたような気がする。(恂)

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