そつと息確かめられる朝寝かな     玉田 春陽子

そつと息確かめられる朝寝かな     玉田 春陽子 『この一句』  NPO法人双牛舎俳句大会で第三席「人賞」に選ばれた作品である。今大会の兼題「春眠」(朝寝はその傍題)を詠んだ一句だが、年配の会員が多い句会だからか、いつまでも寝ていて「生きているのか」と周囲に危ぶまれたり、自分自身「ああ無事に目覚めた」ことに安心するといった趣旨の句が沢山出てきた。曰く、「春眠や猫来て確かむ吾が寝息 幻水」「春眠の目覚めやいのち恙なし 有弘」「春眠や安眠惰眠永眠す 冷峰」「大春眠覚めてこの世のニュース聞く 而云」。この句はそれらの代表として選ばれたものと言えよう。  前の晩はいつもと全く変わらず就寝したのに、翌朝いつまでも起きて来ないなと見に行ったら、息をしていなかった。そんな話を時々聞く。四十代や五十代でこんな死に方をしたら、残された家族が大迷惑だ。しかし、七十代後半以降ともなればさしたる問題はあるまい。むしろ苦しまずに永遠の眠りに入るのだから、まさに大往生、理想的な死に方だ。  でも、この句、息をしているかと確かめに来たのは誰か。恐らくは偕老同穴の連れ合いだろう。こんな風に気に掛けてくれる人がいるなんて、実に幸せ。(水)

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