蓬餅朱の箸買ふや城下町 水口 弥生
蓬餅朱の箸買ふや城下町 水口 弥生
『おかめはちもく』
うらうらと春の陽ざしを浴びながら城下町を歩いている。近頃ブームの「お城巡り」の旅かも知れない。のんびりとした感じが伝わってくる良い句だ。
しかしこの句は、句作上よろしくないと言われる「三段切れ」になっている。「蓬餅」で切れ、「朱の箸買ふや」でまた切れ、「城下町」と名詞止め。上中下いずれにも句切れがある。このような形ではぶつ切れで印象散漫になってしまいがちなので、「三段切れはまずい」と言われるわけだ。しかし、それを逆手に取って、軽快なリズムを強調し効果を発揮する場合もあるから、一概にダメとは言えないのだが、まあこうした詠み方は避けた方が無難である。
では、この句はどうすべきか。蓬餅とか朱の箸とか、どうでもいいようなものを買ってしまいたくなる雰囲気が味を出しているのだから、大きくいじってそれを壊したくない。ここは切れ字の「や」をはずすだけでいいのではないか。さらに「も」を置けば口調が整い、蓬餅が「主」で朱の箸が「従」であることがはっきりして、スムーズに流れる句になるのではなかろうか。
蓬餅朱の箸も買ふ城下町 (水)