春浅し紙飛行機で遊ぶ子ら 加藤 明男
春浅し紙飛行機で遊ぶ子ら 加藤 明男
『季のことば』
「春浅し」は立春から二月下旬までの、まだ冬と言った方がいい頃合いの季語である。風が強く冷たく、時には東京あたりでも氷が張ったり、雪が降ったりすることがある。しかし、そんな中にもはっきりと春の兆しがあり、地面にはぽちぽちと草の芽が出ている。
紙飛行機で遊ぶ子どもたちを持って来たところが「春浅し」にとてもよく合っている。紙を折って作った飛行機は、なにもこの時期に限ったことではないのだが、春先の寒風の中で元気に飛ばしっこしている光景がいい。
ただ近ごろの子どもたちがこういう遊びをするのを目にすることは、ほとんど無い。みんな家に閉じこもりゲームに興じるか、あるいは塾通いなのではないか。それに都会では紙飛行機を飛ばす広場を見つけるのが難しい。
昭和四十年代までは、空き地には子どもが群れ、紙飛行機や凧揚げ、ベーゴマ、メンコ、石蹴り、馬跳びなどをやっていた。そこにはいじめっ子もいじめられっ子もいたが、みんな結構うまくやっていた。この句はもしかしたら、貧しかったが子どもたちが生き生きとしていた時代を懐かしんでのものかも知れない。(水)