子のついで母も処方の春の風邪     鈴木 好夫

子のついで母も処方の春の風邪     鈴木 好夫 『この一句』  作者は医師である。大きな病院の院長などの職を退かれた後、東京・神楽坂にこぢんまりとしたクリニックを開き、今日に至る。この句は、その診察室での様子なのだろう。お母さんが風邪をひいた幼い子供を連れて、やってきた。診察中、作者がふと気づけば、母親も風邪気味であった。  「お母さんも直しておかなければ・・・。処方箋を出しておきましょうか」。町のお医者さんなら、よくある風景だろう。句の作者・鈴木先生はいま、こういう診療をされていたのである。私はこの何年か、町の医院に行ったことがなかったので、懐かしい場面に出会ったような感じを受けた。  ところで私は当初、お母さんが風邪の子供を診てもらったついでに「私も」と医師にお願いし・・・、と解釈してしまった。この句会(日経句会)は最近、会員増で投句数は一八〇にも及んでいる。選句の際、読み飛ばす悪い癖が出て来たようだ。一句一句、気を抜かず、しっかりと目を通さねば! (恂)

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