若鮎の命の苦み酒に溶く 藤野 十三妹
若鮎の命の苦み酒に溶く 藤野 十三妹
『合評会から』(酔吟会)
反平 写生句であるのだが、その中に作者がいる。「命の苦み」の中に作者がいるような気がする。それを「酒に溶く」とはねぇ。すごいなぁ。
正裕 どういう飲み方をしたのかなぁ。焼いたのか、ワタだけを酒に入れたのか…などと考えちゃいましたけど、雰囲気のあるいい句です。若鮎の命の短さにも「苦み」を感じているのでしょうね。
水牛 「酒に溶く」というのは、鮎のワタを食べて口中に残った苦みを、酒を一口含んでしみじみ味わったということなのだろうと・・。
而云 どっちかなぁと思って採らなかったんですよ(笑)。でもいい句だと思います。(僕も選句対象に入れていたんだという声多数)
水馬 俳句は「命」や「生きる」を詠むものだと思うんです。だから「命」などと大きな言葉をそのまま俳句の中に入れちゃぁまずいじゃないかと。
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確かに水馬氏の言う通りだろう。ただ、鮎の腸のほろ苦さを味わっていると、やはりこうした感じが湧いてきて、「命」を使いたくなる気持も分かる。(水)