あの初音また出会ひたし薬師堂     堤 てる夫

あの初音また出会ひたし薬師堂     堤 てる夫 『おかめはちもく』  山間の茂みを背負った薬師堂。陽ざしを一杯に受けて、何とも心地良い温もりがある。鶯が真っ先にやって来て初音を聞かせてくれる。今年もまた聞きたいものだとやって来た。実にほのぼのとした感じのする句である。  しかし、「初音」に「出会ふ」という言い方がどうか。「あの」というのも、「以前はからずも聞いた、あの初音」ということなのだろうが、「また」という言葉とくっつくと少々うるさいようだ。  結局のところ、「あの初音」はまだしも、「また出会ひたし」という叙述が良くないということになる。この中七を何とかすればとても良い句になりそうだ。  「あの初音今年も聞かむ薬師堂」としてはどうか。しかし、「今年も」と挟むと説明口調になると難癖がつくかも知れない。それなら「今年また初音を聞かむ薬師堂」と引っ繰り返したらどうだろう。この場合の「また」はあまり気にならないようだ。とにかく、「去年聞いたあの素晴らしい初音を今年も」という気持を言うのはいいのではないか。と、こうしているうちに浮かんできたのが、   今年また初音聞かせよ薬師堂     てる夫        (水)

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