富士を背に鳶や凧や浜の春     印南 進

富士を背に鳶や凧や浜の春     印南 進 『季のことば』  鳶は「とんび」である。こう読むと中七の字足らずが解消されるが、もう一つ「ん」の入る時の、角のない響きの効果を認めたい。風が適当にあり、天候は晴れ。富士を背にして「とんび」がゆったりと輪を描き、凧がいくつも上がっているのだ。作者は鎌倉の住人。場所は由比ヶ浜あたりと推定出来よう。  早や二月。新年の気分が消えてからこの句を見ると、「春」は正月ではなく、普通の春を意味しているのかと思えてくる。しかし正月でも早春でも、どちらもOKの雰囲気である。凧がいくつも揚がっている。最近の流行りというトンビ凧もあって、鳶が仲間なのかと寄って来ているのかもしれない。  歳時記によれば「凧」の季は「春」なので、この句は季重なりである。しかし凧と浜の春のどちらが欠けても、句の持つのんびりとした味わいは薄れていくだろう。この句会(三四郎句会)には「句重なりを無理に避ける必要はない」という申し合わせがある。いいことを決めたものだと思った。(恂)

続きを読む