風上に席を移してどんと焼き     石黒 賢一

風上に席を移してどんと焼き     石黒 賢一 『この一句』  この句を見て少年時代の焚き火を思い出した。暖房が火鉢や炬燵くらいだった昭和二、三十年代の頃、悪ガキが集まって焚き火をし、暖まったものだ。風下になると煙くてかなわず、風上に回ると今度はそこに煙が押し寄せ、また風下に逃げる。なんでオレのところばかりに、と思ったこともあった。  考えて見れば、どんど焼きは大掛かりな焚き火なのだ。風下で見ていれば煙が押し寄せるので、風上に席を移すことになる。正月最後の行事、年に一度の火祭だから、相当な騒ぎになりそうだ。家族が揃っての見物ならば、敷いていたゴザを丸め、幼児を抱えて走るような場面もあるのだろう。  私(筆者)がどんど焼きを見たのは一度だけ。それも東京・赤坂の日枝神社で昼間に行われたのを、遠くから見物しただけだった。郷里のどんど焼きを間近に見て来た人たちとでは、体験の濃淡が決定的に違う。焔で眉毛が焦げるほど、煙が来れば逃げ惑うようなどんど焼きを体験したいものである。(恂)

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