冬ざれや裸の王様咆哮す     中嶋 阿猿

冬ざれや裸の王様咆哮す     中嶋 阿猿 『おかめはちもく』  最初この句を見た時、何を言っているのかが分からなかった。句会の選句披講の際にも声が上がらず、そのままになった。家へ帰って、もう一度みんなの選句結果や句評のメモなど見返しているうちに、はっと気がついた。  「そうか、トランプ新大統領か」  言われてみればまさにそうである。「世界で一番エライのは俺だ」と摩天楼の上で咆哮しているのだ。とても面白い。「いやはや、鈍かったなあ」とそばで居眠りしている居付き猫チビの頭を叩いたら、ぎゃあ、何すんのさと引っかかれた。  確かにタイミングの良い句であり、言い得て妙ではあるが、さて、多くの人に理解されずに素通りされたこの句が、しばらくたってから理解されるということはまずあり得ないだろう。さりながら、この句は形がちゃんと出来ており、直すところが無い。「冬ざれ」という季語も語感も合っている。さてどうするか・・・。  そうだ、こういう時にこそ「詞書」(前書)を生かすべきではないか。   破天荒の大統領誕生  冬ざれや裸の王様咆哮す 阿猿     (水)

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