蛇口から水細く出す寒の内     岩田 三代

蛇口から水細く出す寒の内     岩田 三代 『季のことば』  朝寝坊で寒がりの私には、この感じが本当によく分かる。蛇口をいきなり大きくは開かない。おずおず、ちょろちょろと水を出して、「おー冷たい」などと独り言を言って、そそくさと洗うのだ。  人のそばには常に水がある。そのせいか四季折々の「水」にまつわる季語が沢山あり、それらを詠んだ句や、水を他の季語と合わせて詠んだ句が無数にある。そうした句の中でも、これは「寒の内」の感じをとてもよく表した句として出色のものではないかと思う。句会初参加の作者はお披露目早々好打を放った。  この句を読んでいて思い出したのだが、「水荒く使ふ五月となりにけり 伊藤道明」という句がある。これは蛇口を威勢良く開けて、じゃーっと豪快に水を出す。いかにも夏になったぞという感じで、掲句と対になるようだ。  そして、春の水には「水底に映れる影もぬるむなり 杉田久女」があり、秋には「水澄みて亡き諸人の小声かな 秋元不死男」がある。こんな風に四季折々の「水」の句を思い出しながら、自分でも作っていくと面白い。(水)

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