記念にと撮れど写らぬ雪女     嵐田 双歩

記念にと撮れど写らぬ雪女     嵐田 双歩 『おかめはちもく』  雪女、雪女郎というのは雪国に伝わる説話・伝説で、降りしきる雪の中に現れる妖怪である。もともとが幻想の産物である。これを句にするのはなかなか難しい。雪女の説話をなぞって詠んだだけでは詰まらない。さりとて現実世界に引っ張り込んで詠むと、作り物の感じがして薄っぺらな句になってしまう。近松門左衛門の言葉に「虚実皮膜」の間というのがあるのが、雪女を句にするにはこんなところが眼目になるだろう。  ということを念頭にこの句を眺めると、この「虚」と「実」との折り合いがうまくついていないように思う。この句は、現実にはあり得ない「雪女」が、豪雪の中に現れたかのように感じてシャッターを押した、ということなのであろう。雪女などというものは伝説の中の存在なのに、あたかもそれが居るように思わせる銀世界。そうした幻想と現実がないまぜになっているところを言うのなら、「記念にと撮れど」という実際的行動を説明するような表現は好ましくない。この辺は吹雪の中にぼやかした表現にした方がいい。   (添削例) 撮ったぞと思へど写らぬ雪女   (水)

続きを読む