餅も菜も小さく刻み雑煮膳     山口 斗詩子

餅も菜も小さく刻み雑煮膳     山口 斗詩子 『この一句』  「老人大国ニッポン」のお正月を鮮やかに描き切った句である。喉に詰まりやすい餅は小さく切り、歯に挟まりやすい小松菜は細かく刻む。高齢者の雑煮作りの心得をそのまま詠んだような句であり、「何が面白いんだ」という声が聞こえてきそうだ。しかし、こういう風に素直にそのままを詠み止めたところがなかなかのものではないか。年老いた夫婦二人の、静かでのんびりしたお正月の情景が浮かんで来る。  年を取ることによる不自由さや悲哀というものは、年を取ってみなければ分からない。数年前までは何ということもなく切ることの出来た伸し餅が切れなくなって、「ああ、来年からはサトウの切餅か」なんてぼやいている。ちょっと薄暗い部屋に入るともう新聞が読めない。暮らしの節々で老いの切なさを味わう。  しかし、この句は同じように老人の生態を題材にしていながら、暗い感じがしない。加齢による身体能力の低下を平静に受け止めている、いわば「安心立命」といった作者の姿勢が伝わってきて、こちらも素直な気持になるのだ。(水)

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