豚汁にならぶ笑顔や空っ風     須藤 光迷

豚汁にならぶ笑顔や空っ風        須藤 光迷 『季のことば』  豚汁ほど日本全国至る所で頻繁に作られている汁物はないのだが、季語になっていない。「豚汁」は東京近辺では昭和の初め頃から作られるようになったのだが、それまでの長い間「薩摩汁」とか「狸汁」と呼ばれて、鶏肉やホンモノの狸や猪の肉が使われていた。それが豚肉に変わり、大根、人参、牛蒡、里芋、蒟蒻などとのごった汁になった。今や薩摩汁とか狸汁と呼ぶ人はほとんど居らず、「豚汁」という名前が定着している。もうそろそろ「豚汁」が冬の季語になっても良さそうに思う。  冬の寒い日には絶好の食べ物で、村おこしのイベントなどで振る舞われるのは大概これである。震災や大火事、洪水などで避難所が設けられた際の汁物の定番になっている。  この句の豚汁も「ならぶ」とあるから、何かの催事の目玉になっていて行列が出来ているのだ。冬の関東にはつきものの「空っ風」をものともせず、みんな熱々の豚汁をいただく順番を笑顔で待っている。「空っ風」という季語が効いていて、この場合は「豚汁」が季語に昇格していなくて良かったようである。(水)

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