生け水槽真っ正面の河豚の顔 高石 昌魚
生け水槽真っ正面の河豚の顔 高石 昌魚
『おかめはちもく』
生け水槽真っ正面の河豚の顔 高石 昌魚
これは近ごろ東京にもよく見られる「養殖とらふぐ」を生簀に泳がせて、客席近くに展示する評判の河豚料理屋であろう。美味い虎河豚を比較的安価に提供し、庶民が気軽に入って行けるようにした功績は大である。
河豚という魚は本当に愛敬のある顔をしている。まさか河豚に野次馬根性があるとは思えないのだが、時としてこの句のように、水槽の中からこちらを真っ正面に見つめることがある。これから食われるとも知らないで、小さな胸びれをひっきりなしに動かし、おちょぼ口をぱくぱく開いたりしている。
河豚と睨めっこという、実に面白い情景を詠んだ。しかし、「生け水槽」というのにちょっと引っ掛かる。「生け簀」という言葉があるのに習って、四面をガラス張りにした水槽だからこういう言葉を拵えたものと思える。
しかし、「真っ正面の河豚の顔」という叙述で水槽に泳ぐ生きた河豚であることは分かるのだから、わざわざ「生け」と言う必要は無さそうだ。
(添削例) 水槽の真っ正面の河豚の顔 (水)
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