鮟鱇をぶら下げて行く渚かな     井上 啓一

鮟鱇をぶら下げて行く渚かな     井上 啓一 『合評会から』 百子 小さな漁村の夕方の情景が浮かびます。 大虫 私は映画の冒頭の一シーンを思い描いた。何気ない情景なのですが、ここから何か複雑なドラマが始まって行きそうな、そんな感じを受けました。 光迷 漁師が「こんなのが掛かっちゃった。しょうがねぇ、家で食べるか」と売り物にならない小さな鮟鱇をぶら下げて海辺を歩いて行く。吊るし切りするほどじゃない。俎板でも捌けますからね。 水馬 大きな鮟鱇をぶら下げて? と思ったが、小さなものなら頷けます。          *            *  確かに何気ない情景である。しかし句の鑑賞者たちはその裏に潜むものを探り出し、さまざまに思い描き、作品に厚みを加えていった。小舟で漁を終えた夕方なのだろう。鮟鱇は漁師がぶら下げて行けるほどの大きさである。彼はこの獲物が金にならなかったことをぼやいているが、晩酌を思えば頬も緩みがちだ。そしてさらに・・・、作品は合評会を終えてなお、先へと続いて行く。(恂)

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